遠隔マインドコントロールの方法

笑い

 

脳の特定部位の電気刺激により、笑いを引き起こすことができます。

これらの部位には視床下核、前帯状皮質、上前頭回、前頭弁蓋、側頭皮質底部などがあります。

他の反応に比べると悪用されたときの危険性は低いと言えますが、不適切な場面で突拍子もなく笑いだす怪しい人物として、個人の信用を貶める程度のことはできると思われます。

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回路

人間

動物も笑うということが発見されたのは最近の話であるため、笑いの回路は人間を使った研究の限られた枠組みの中で探求されてきました。

人間の脳電気刺激の実験から、いくつか笑いが誘発される領域が特定されています。

外側の皮質領域として、上前頭回 (補足運動野と前補足運動野)、側頭皮質底部 (下側頭回、紡錘状回、海馬傍回) などがあります。

内側の皮質領域として、前帯状皮質、島皮質、前頭弁蓋があります。

脳深部の領域として、視床下核と側坐核があります。

電気刺激で笑いが誘発される外側の皮質領域 (上前頭回)
(脳画像はVanderah 2018から)

電気刺激で笑いが誘発される外側の皮質領域 (側頭皮質底部)
(脳画像はVanderah 2018から)

電気刺激で笑いが誘発される内側の皮質領域
(脳画像はVanderah 2018から)

電気刺激で笑いが誘発される脳深部の領域
(脳画像はVanderah 2018から)

動物

感情神経科学の先駆者であるヤーク・パンクセップ博士は、ラットはくすぐられると、人間には聞こえない50kHzの超音波のさえずりを発することを発見しました。(Panksepp and Burgdorf 2003)

博士はこれを人間の笑いに相当すると考えました。

ドイツのハノーバ獣医大学の研究で、くすぐりによって引き起こされる笑いは人間の幼児と類人猿の幼児で相同であること、つまり共通の祖先から受け継がれたものであることがわかりました。(Davila Ross et al. 2009)

したがって少なくとも類人猿に限って言えば、笑いという感情を彼らに帰属させることは擬人化ではない、つまり人間と同じように本当に笑っているということになります。

笑いの進化モデル。人間と大型類人猿の笑いは共通祖先に由来する。

最近UCLA大学の研究は、遊んでいる時に、笑いのような発声を伴う動物が65種もいることを示しました。Winkler and Bryant 2021)

これには人間、類人猿、多数の霊長類、ラット、イヌ、ネコ、クマ、シャチ、イルカ、ゾウ、キツネ、ウシ、カンガルーなどの哺乳類の他、3種の鳥類が含まれていました。

これらの動物は、笑いの神経回路を解明するためのモデル生物として今後利用できる可能性があります。

人間

視床下核、前帯状皮質、上前頭回、前頭弁蓋、島皮質、側頭皮質底部、側坐核、視床下部過誤腫の電気刺激から笑いが誘発されることが示されています。

視床下核

フランスのグルノーブル大学の研究者は視床下核への電気刺激で笑いが誘発された2つの症例を報告しました。(Krack et al. 2001)

一人目はパーキンソン病の47歳の男性患者で、治療として視床下核への継続的な電気刺激を施されていました。

ある機会に、パーキンソン症候群をさらに改善するために、電気刺激のパルス幅を60ミリ秒から90ミリ秒に増やしました。

翌日、患者は爆笑が止まらないと訴えて戻ってきました。

当初は彼と彼の妻はその笑いを面白いと感じており、彼の気分は高揚していました。

笑いはやがて、不適切で、ほとんど制御不能で、疲れ果ててしまうため、煩わしく不快なものになりました。しかし、患者は笑っている時は依然として楽しいと感じており、笑いの合間も気分は高揚していました。

パルス幅を60ミリ秒に戻すと、爆笑は直ちに消失しました。

2か月後、この副作用をさらに詳しく調べるために、患者の同意を得て、実験的にパルス幅を90ミリ秒に再び増加させました。

パルス幅を広げてから1分後、患者は右手で太ももを何度も叩き始めました。なぜそうしたのかと尋ねると、患者はこれがしっくりくると答えました。

5分後、彼はめまいを感じ、その後まもなく、愉快さを伴う最初の爆笑が生じました。 彼は困惑した表情で微笑み、大声で笑い、両手で太ももを何度も叩き、足で床を何度も叩きました。

その動きはあまりに大きく、彼は椅子から投げ出されそうになりました。

彼の物まねや身振りからは彼は楽しんでいるようにみえ、実際、患者自身この状況全体を面白がっていました。彼は常に周りを見回し、楽しげな表情で周囲の環境を観察していました。

また彼は非常に生き生きとした連想をし、シャレを言いました。笑いは非常に伝染しやすく、同席していた何人かの神経内科医・神経外科医も笑い転げました。

例えば、ベナビド教授の鼻を見たとき、患者はシラノ・ド・ベルジュラックの鼻を思い浮かべ、ベナビド教授の顔を指で指してまた爆笑し始めました。

クラック博士がこらえきれずに吹き出してしまうと、患者は「イル・クラック (彼は大笑いしている)」と叫び、このダジャレで患者を含むその場にいた全員が大爆笑の渦に巻き込まれました。

笑いの制御がほとんどできないことが時間とともに不快になり、笑わせるのをやめてほしいと頼んできました。

刺激停止後、パーキンソン症状が1分以内に再発し、笑いは徐々に弱まりました。

刺激再開後、パーキンソン症状は消失し、笑いが急速に戻りました。

二人目の患者は54歳のパーキンソン病の男性で、同様に治療として視床下核への継続的な電気刺激を施されていました。

パーキンソン症候群をさらに改善するために、刺激振幅を3.2 Vから5.0 Vまで徐々に増加させました。

その後間もなく、患者は断続的に爆笑するようになり、電圧が3.2 Vに低下するまで数分間続きました。

翌週、患者の同意のもと、刺激振幅を10分かけて徐々に5.0 Vまで増加させたところ、患者はクマール博士の曲がった眼鏡のせいで博士の頭がおかしく見えると思い、自発的に微笑みました。

振幅が5.5 Vに増加してから1分後、患者は「不安や緊張を感じますか?」という質問に笑い始めました。

なぜ笑っているのかと尋ねると、「過剰に刺激されたので (over-stimulated)、笑っていると言えるだろうな」と冗談を言いました。(※)

過剰刺激 (overstimulation) : 感覚過負荷とも呼ばれ、感覚が処理できる以上の情報を受け取ることで起こり、不快感につながる。

その後も断続的な笑いが続き、左脚にリズミカルなジスキネジアが現れました。

彼は以前にもジスキネジアを経験していましたが、この新しいタイプのジスキネジアが非常に面白く、新たな笑いのきっかけとなりました。

彼はあまりに笑いすぎて、「脳に酸素が足りないみたいだ 」と言いました。

さらに1分ほど断続的に爆笑が続いた後、彼は「反抗したくなったのに、すぐ笑うんだ。それってあんまり反抗的じゃないよな」と発言しました。

それから数分後、彼は愉快さを伴う爆笑を何度も繰り返しました。

患者はついに刺激の中止を要求しました。ジスキネジアと断続的な笑いが5分間持続した後、左腕の振戦が戻り、陽気さは沈静化しました。

前帯状皮質

イタリアのパルマ大学では、笑いにおける前帯状皮質の役割を調査する実験が行われました。(Caruana et al. 2015)

対象は57人のてんかん患者で、前帯状皮質への電気刺激で10人に笑いが生じました。

笑いを誘発した部位は前帯状皮質の膝前部 (pACC)に集中していました。

黄色:爆笑、赤色:陽気さを伴わない笑い。

5人の患者では、刺激によって陽気さを伴う爆笑が誘発されました。これらの患者において、刺激の効果は表情の変化だけでなく、はっきりとした陽気な感情も引き起こしました。

より具体的には、患者は神経科医に指示された読み上げを停止し、笑い始めました。

患者は、原因不明の笑いの衝動のために自分の反応が起きたものとしました。1例のみ、患者は何か奇妙なことが彼に起こったために笑ったと述べました。

残りの5人では、刺激によって顔の反対側から始まる笑顔が誘発されましたが、陽気さは伴いませんでした。

患者が微笑んでいる間、患者は読み上げを続けました。

刺激終了時には、すべての患者が笑顔を抑えられなかったと自発的に述べ、顔面の反対側に広がる感覚と頬が持ち上がったような感覚を申告しました。

エモリー大学の研究では、帯状束の特定部位の電気刺激が、陽気さを伴う笑いを誘発することが発見されました。(Bijanki et al. 2019)

帯状束は帯状皮質から伸びる神経繊維の束で、帯状皮質とその他の脳領域をつないでいます。

対象は3人のてんかん患者で、笑いを誘発した電極の位置は全員、帯状束の膝上部の約1 cmの範囲にありました。

緑色が帯状束で、赤色が笑いを誘発した刺激点。

全員で刺激が強くなるほど笑いの表現が強くなりました。

1人目の23歳の女性患者では、左帯状束の電気刺激により、笑顔、笑声などの陽気な振る舞いが即時に誘発され、彼女は肯定的な感情体験を申告しました。

彼女は、刺激の開始時に思わず笑いたくなる衝動を感じたと申告しました。この衝動は、数秒間の刺激の経過とともに、心地よくくつろいだ感覚へと変化しました。

刺激が終わると、この感覚は数秒間のうちに消失しました。

刺激の終了後、感覚は数秒のうちに消失しました。笑顔は右頬の筋肉の収縮から始まり、その後顔全体に広がって自然な笑顔になりました。

刺激強度が強くなるほど、笑いの体験はより強くなりました。

1.0 mAでは患者は思わずくすくす笑いました。「何か感じる。」

1.5 mAでは患者は落ち着かなくなり、気分が変わりました。「ただ幸せな気持ち。」

2.0 mAでは笑声が加わりました。「同じ感じだったけど、いい意味でもっと強烈だった……最高!」

3.5 mAでは感情がさらに強くなりました。「わあ、みんなもこれを体験すべき……嬉しすぎて泣きそう。」

2人目の40歳の男性患者は右帯状束への電気刺激を受けました。

笑顔は2.5 mAで誘発され、気分の高揚は3.0 mAで申告され、明らかな笑声は3.5 mAで発生しました。

より後方の電極接点への刺激では、2.0 mAでの微笑みに加えて、2.5 mAで動きたくなる衝動が誘発されました。

3人目の28歳の女性患者には、幸福感、くつろぎ、術後の頭部の痛みの評価を10段階で評価してもらいました。

3 Vで刺激では笑顔と笑声が誘発され、幸福感が10%増加し、くつろぎが20%増加し、痛みが20%減少しました。

5 Vの刺激でも同様の行動が得られ、幸福感が20%増加し、くつろぎが60%増加し、痛みが40%減少しました。

4 V刺激では、患者に悲しい思い出を物語るよう求めたところ、患者は笑っているのが観察され、正確な記憶にもかかわらず悲しい気持ちではないと述べました。

「ペットの犬の死を思い出しました。悲しい思い出だったことを覚えていますが、今この瞬間は悲しいとは感じていません。」

スイスのローザンヌ大学病院では、前帯状皮質の電気刺激で陽気さを伴わない笑いが生じた症例が報告されました。(Sperli et al. 2006)

対象は21歳のてんかんの男性で、右側の帯状皮質の電気刺激は笑いを誘発しました。

弱い刺激では主に顔の左側に笑顔のみが誘発されましたが、強い刺激では両側の笑顔とともに笑声が引き出されました。

刺激の強さが増すにつれて、笑いの持続時間と強さも増加しました。これらの電気刺激は翌日も繰り返され、同じ現象が生じました。

笑いには陽気さ、愉快さといった感覚は決して伴いませんでした。

この患者は入院中ずっと抑うつ気分を訴えていました。

帯状皮質を電気刺激しても気分は変わりませんでした。患者は、自分はまだ悲しいと感じており、笑顔や笑声は不随意的なものであると、きっぱりと述べました。

彼の感情状態とは対照的に、笑顔と笑声はごく自然なものであったようで、同席していたスタッフがつられて笑いました。

上前頭回

UCLAの研究では、補足運動野の電気刺激で笑いが誘発されることが発見されました。(Fried et al. 1998)

被験者は16歳の女性てんかん患者で、補足運動野の2 cm四方の小さな領域への電気刺激で笑いが誘発されました。

笑いには愉快さや陽気さの感覚が伴っていました。

数回の試行で電気刺激によって笑いが誘発されましたが、患者は毎回異なる説明をし、笑いは何であれ、その場にあった外部刺激によるものとされました。

  • 名前挙げの際に見た特定の物体 (「馬が面白い」)
  • 読書の際のある段落の特定の内容
  • 指の並置課題を行っている際に部屋にいた人々 (「あなたたち、立っているだけで面白い」)

刺激の強さが増すにつれて、笑いの持続時間と強さも増加しました。

低強度では笑顔のみが見られましたが、高強度では伝染する力強い笑いが誘発されました。

ドイツのてんかんセンターでは、補足運動野のほか、隣接する運動前野への電気刺激でも笑いが誘発された症例が報告されました。(Schmitt et al. 2006) 

患者の一人は18か月の男児で、もう一人は35歳の女性でした。

小児患者は正中線近くの運動前野、女性患者は補足運動野の前部の電気刺激から笑いは得られました。

女性患者は感情的な内容が欠けていると申告しました。「これは私じゃない!」

フランスのリヨン神経科学研究センターでは、前補足運動野の電気刺激で笑いが誘発された症例が報告されました。(Krolak‐Salmon et al. 2005) 

対象はてんかんを患う19歳の女性患者で、左前補足運動野を刺激すると笑顔と笑声を引き起こしました。

この現象を観察するために必要な最小強度は 0.6 mA でした。

彼女はその後、無理やり笑顔を作ったように唇の角が上がるのを感じ、その後に本当の陽気さや幸福感を感じた、と申告しました。

「最初は笑い声をあげたり微笑んだりする気分にはなりませんでした。瞬間、本当に笑いたくなり、ローレル&ハーディの映画を見ているような、愉快な感覚になりました」

彼女は後に、刺激による不快感にもかかわらず笑いをこらえることができなかったと申告しました。

対照的に、0.8 mAの刺激強度では、笑顔が観察され、その後、笑い声、うめき声​​、そしてジストニアが現れました。

そして刺激が終了してから2分後、彼女は突然泣き出し、悲しくなり、15分間、声の調子が非常に感傷的なものになりました。

「これは普通じゃない、私のせいじゃない、笑ったり泣いたりせずにはいられない。」

近隣部位を刺激しても、言語停止と異常な顔面および手足の動きのみが引き起こされただけでした。

前頭弁蓋・島皮質

UHクリーブランド医療センターでは、前頭弁蓋への電気刺激で笑いが誘発された症例が報告されました。 (Vaca et al. 2011) 

対象はてんかんの55歳の女性患者で、左下前頭回の弁蓋部の電気刺激により一貫して陽気さと笑いが誘発されました。

いくつかの機会で、彼女は刺激中に笑い始め、刺激が終わると止まりました。

刺激終了後、彼女は「あなたたちは私を笑わせている」、「何かが私を笑わせていた」、「それは本当に面白かった」などとコメントしました。

何が可笑しかったのか尋ねると、彼女は特定できませんでしたが、「誰かが何かについて冗談を言っているようだった」と表現しました。

その笑いは彼女の典型的な笑いのようで、伝染性があり、時にはその場にいた医師や技師が一斉に爆笑することもありました。

この反応は別の日に行われた刺激セッションでほぼ完全に再現されました。

イタリアのパルマ大学でも、前頭弁蓋の電気刺激で笑いが生じた症例が報告されました。(Caruana et al. 2016) 

対象は4人のてんかん患者で、前頭弁蓋への電気刺激ですべての患者に笑顔や笑声が生じました。

1番目の症例は23歳の女性で、左前頭弁蓋を電気刺激すると、笑声を伴わない笑顔が生じました。

笑顔には陽気さは伴っておらず、患者は自分が表情を作っていることに気づいていませんでいした。

彼女に笑顔を浮かべたかどうか尋ねると、彼女は否定的に答え、刺激は全く効果がなかったと述べました。

2番目の症例は30歳の女性で、右前頭弁蓋を電気刺激すると、発話が中断され、笑声を伴わない笑顔が生じました。

最初の症例と同様に、顔の表情には発声や姿勢の変化が伴わず、笑いではなく微笑みとなって現れました。

なぜ発話を止めて笑顔を浮かべたのか尋ねると、彼女は話すことができなくなったと答え、笑顔を浮かべた理由は説明できませんでした。

3番目の症例は39歳の女性で、左前頭蓋部の電気刺激すると、発話が中断され、笑顔と笑声が生じました。

その後、患者は笑っていたので発話が停止したと自発的に申告しました。

4番目の症例は4歳の男児で、右前頭弁蓋を電気刺激すると、笑顔と笑声が生じました。

刺激が消えた後も笑顔の表情は維持されましたが、はっきりとした発声はありませんでした。

中国の首都医科大学では、弁蓋に覆われた皮質領域である、島皮質への電気刺激で笑いが誘発された症例が報告されました。(Yan et al. 2019)

被験者は21歳のてんかんの男性患者で、左島皮質の後部への電気刺激により、再現性のある笑いが誘発されました。

患者の説明によると、彼は幸せな気分になり、説明できない笑いたくなる衝動に駆られて、その後、制御できない笑いが続きました。

彼の笑顔は顔の右側から始まり、続いて顔全体に広がりました。

側頭皮質底部

ジョンズ・ホプキンス大学の研究者は、側頭皮質底部への電気刺激で爆笑が誘発された症例を報告しました。(Arroyo et al. 1993) 

対象は23歳と24歳のてんかんの女性患者で、側頭皮質底部にある紡錘状回と海馬傍回への電気刺激により、陽気な感覚をともなう爆笑が生じました。

一人の患者の笑いは、彼女を検査した人達に伝染性の笑いとして感じられました。

彼女は笑いに関連する感情を、面白い風に「色んなことの意味が変わった」「色んなことがとてもおかしく聞こえた」と2つの方法で表現しました。

もう一人の患者がみせた笑いは、彼女の普段の笑いに似ていたものの、検査した人達からは、彼女の自然な笑いよりも活発で甲高いと評されました。

彼女は面白い感覚、頭が弱った感覚、全身の輝き、幸せでめまいのする感覚を訴えました。

京都大学の研究者も、側頭皮質底部への電気刺激で笑いが誘発された症例を報告しました。(Satow 2003, Yamao et al. 2015) 

対象は17歳と24歳のてんかんの女性患者で、笑いが誘発されたのは両名とも側頭皮質底部にある下側頭回からでした。

1人目の患者では、電気刺激によって一貫して口の右側が持ち上げられ、その後、陽気さを伴って両側で表情を作りました。

刺激終了後、患者は 「なぜだかわからないけど、何かが面白くて笑ってしまった 」と言いました

2人目の患者では、低強度で短時間の電気刺激によって、笑いを伴わない陽気さが一貫して生じ、それには必ず彼女が幼少期にテレビ番組で聞いたことのあるメロディーが添えられました。

陽気さの持続時間と強度は、刺激の持続時間と強度に比例して増加し、最終的に高強度かつ長時間の刺激で彼女は笑いました。

患者は、その曲が面白く感じられ、楽しくなったが、それは電気刺激の間だけだったと述べました。

側坐核

フロリダ大学の研究グループは、側坐核の電気刺激で笑顔と多幸感が誘発された症例を報告しました。(Okun et al. 2004)

患者は強迫性障害の34歳の女性で、実験的治療として右の側坐核への電気刺激が施されました。

術中評価では、2 Vの刺激でほうれい線の非対称性が観察されました。患者はこの観察中の気分を「クラクラする」と表現しました。

刺激の強度が4 V、6 V、8 Vと増加するにつれて、患者は顔の左側に笑顔を見せ、多幸感を体験しました。

多幸感は、クラクラする、幸福感、笑いたい気持ち、そして笑っていることに対する恥ずかしさや照れくささ、と表現されました。

左側を刺激すると同様の反応が引き起こされ、両側を刺激すると多幸感を伴う左右対称の笑顔が見られました。

刺激を中止するとこの効果はなくなりました。

電気刺激を長期にわたって適用すると、患者の気分と病状が大幅に改善されました。

同研究グループは、側坐核への電気刺激で誘発される笑いについて、6人の強迫性障害の患者を対象に研究しました。(Haq et al. 2011)

側坐核を刺激すると、患者はすぐに多幸感を覚えたと報告し、刺激を受けた側とは反対側に笑顔を浮かべました。

笑顔は刺激の始まりから1〜2秒以内に始まり、これは意識的に「真顔を保とうとしていた」と報告した1人の患者を除いて、全員に生じました。

場合によっては、笑顔が顔の両側に広がり、自然な笑いが生じることもありました。

同じ部位を同じ強さで刺激すると、同じ笑いが再現されました。

笑顔が観察された刺激部位では、刺激が強くなるにつれて気分は高揚しましたが、笑顔が観察されなかった刺激部位では、刺激が強くなるにつれて気分は消沈しました。

メイヨー・クリニックの研究グループも、側坐核への電気刺激で誘発される笑いについて、4人の強迫性障害の患者を対象に研究しました。(Gibson et al. 2016)

側坐核を電気刺激すると、4人の患者のうち3人に笑顔が観察されました。2人の患者では、笑顔に自然な笑声が伴っていました。

1人の患者だけが明らかな笑顔や笑声の兆候を示しませんでしたが、不安が減少し、気分と活力が増加したと申告しました。

他の患者は、自分の心の状態を「頭が冴えている」「不安が少ない」「幸せ」などと表現しました。

ある患者は、刺激を受けている間、「幸せな時は (強迫性障害が) それほど気になりません」と述べました。

別の患者は、幸福感とともに「金属的な」匂いを体験しました。

彼はその匂いを快感と結びつけており、刺激が止まると実験者に「あの匂いを戻してもらえませんか」と頼みました。

視床下部過誤腫

アラバマ州のてんかんセンターでは、視床下部過誤腫と笑いてんかん発作を有する患者の治療が行われていました。(Kuzniecky et al. 1997)

患者の一人は30歳の男性で、衝動的で怒りっぽく、攻撃的な行動を示していました。

彼は新生児期から笑い発作を起こしており、1日に1~3回発作を起こしていました。

発作中、彼は笑い、頭を右に振り、続いて複雑部分発作が生じました。

また、彼は1日に複数回の小さな発作を訴えており、頭に奇妙な感覚が生じ、その後に抵抗できない短い笑いが続くことを特徴としました。

視床過誤腫への電気刺激により、この小さな発作が再現されました。

患者は、頭に奇妙な感覚が生じ、その後15秒間笑いが続いたと申告しました。後に行われた3回の刺激でも笑い発作が確実に再現されました。

視床下部過誤腫の凝固により笑い発作は治癒し、怒りっぽさや攻撃的な傾向も軽減しました。

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石塚 拓磨

石塚 拓磨

北海道函館市在住。大学では情報工学を専攻し、エンジニアとして10年以上の経験があります。
このサイトを通じて少しでも多くの人が電磁波の危険性について気づいていただければ幸いです。

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